超音波画像診断装置を用いた肩峰下滑液包の厚み測定について
<論文>
Ohya N et al:Relative and absolute reliability of ultrasound measurements for the thickness of the soft tissue around the shoulder joint of young normal subjects. J Phys Ther Sci. 2017 Apr;29(4):754-759.
<なぜこの論文を選んだか>
肩峰下滑液包は肩関節の動きを円滑にするために重要な組織だが、非常に薄くエコーでも捉えにくい印象を受けている。そのため、その厚み測定に信頼性があるのか興味があった。
<概要>
○目的
肩関節周囲の軟部組織厚を測定する際の相対信頼度と絶対信頼度を分析することにより超音波測定の信頼性を検討すること。
○対象
健常成人11名22肩(22.8±2.7)
○方法
棘上筋、肩峰下滑液包(SAB)、上腕二頭筋長頭腱(LHB)の厚みを超音波画像診断装置を用いて測定。
棘上筋・SAB:肩峰と大結節Superior facetが描出される位置で厚み計測
LHB:結節間溝を中央に描出し、肩甲下筋が見える位置で厚みを計測
絶対信頼性:標準誤差(SEM)、最小化変量(MDC)、Bland-Altman plot
○結果
棘上筋:ICC=0.91、SEM=0.09、MDC95=0.26
SAB:ICC=0.82、SEM=0.07、MDC95=0.18
LHB:ICC=0.90、SEM=0.08、MDC95=0.23
<コメント>
各項目いずれにおいても高い信頼性を有し、なおかつ系統誤差が検出されなかったことから、臨床における評価指標として十分に測定可能であることが考えられる。
SABに関しては健常者はきれいに描出されているが、肩関節疾患を有する症例ではどのようになるのか今後調査が必要かと思われる。
sho’sめも
・標準偏差Standard deviation
データの分布のばらつきをみる尺度の一つ。
平均と標準偏差がわかれば、データがどの範囲にどのように散らばっているか(分布)推定できる。
・標準誤差Standard error of the mean
SDはデータそのもののばらつきを見る尺度で、SEMは平均のばらつきを表している。