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shoの超音波エコー論文めも

このブログではUS(超音波エコー)に関する論文を中心に紹介していきます。また、自分で撮影したエコー画像も添付していきます。

棘下筋の伸展内旋ストレッチに対する急性効果と時間経過

<論文>

Kusano K et al:Acute effect and time course of extension and internal rotation stretching of the shoulder on infraspinatus muscle hardness. J Shoulder Elbow Surg. 2017 Oct;26(10):1782-1788.

 

<なぜこの論文を選んだか>

臨床上、棘下筋に対する介入およびストレッチの自主トレを指導する機会が多い。そのストレッチの時間はどの程度有効なのかということが検証されているため、興味があった。

 

<概要>

○目的

棘下筋の硬さ(筋の柔軟性の指標)をせん弾性係数を測定し、スタティックストレッチ(SS)の急性効果および硬さを減少させる最小時間を決定すること。

○対象

 健常成人20名(22.7±1.5歳)

○方法

クロスオーバーデザイン

 10秒毎に120秒まで実施(SS介入前後で測定)

腹臥位とし、他動的に肩関節伸展位で内旋ストレッチを実施

せん断性係数は腹臥位、手を後ろに回し、母指を第8胸椎に合わせた。

撮影部位は2本の線(肩甲棘の中央と下角を結んだ線)と(大結節と肩甲棘三角と下角を結んだせんの1/3)の交点で撮影

ROMは肩関節90度外転位内旋を測定(デジタル角度計)

○結果

棘下筋の柔軟性:介入前と10秒後=有意差なし

        介入前と20秒~120秒後=有意差あり (p<0.05)

 ROM:介入前と120秒後で有意差あり(p<0.05)

<コメント>

自主トレ指導する際の時間の目安が基礎研究によってわかったため、指導する際の指標の一つにしたい。 

 

sho’sめも

・クロスオーバーデザイン

対象を2群に分け、各群に別々の治療を行って評価し、その後、各群の治療方法を交換して介入し、再度評価する方法。

肩甲骨を固定したCross body stretchingの棘下筋、小円筋、三角筋に対する効果

<論文>

Umehara J et al:Effect of scapular stabilization during cross-body stretch on the hardness of infraspinatus, teres minor, and deltoid muscles: An ultrasonic shear wave elastography study. Musculoskelet Sci Pract. 2017 ;27:91-96.

 

<なぜこの論文を選んだか>

Cross body stretchingは後方タイトネスの改善に有効であること、内旋可動域の改善に有効であることから臨床でよく自主トレ指導するストレッチの一つである。そのストレッチを肩甲骨固定することで、どの筋にどのような変化が生じるのか興味があったから。

 

<概要>

○目的

超音波せん断波エラストグラフィを使用して、ストレッチ中の肩甲骨の固定が棘下筋、小円筋、三角筋後部の硬さを効果的に減少させるか定量的に調査すること。

○対象

 健常成人男性20名(23.4±3.3)

○方法

ランダム化クロスオーバーデザイン

測定肢位:端座位、肩関節90度屈曲位

測定部位:棘下筋上部線維、棘下筋下部線維、小円筋、三角筋後部線維

ストレッチ方法:①側臥位にて上方にある上肢をストレッチ

        ②①の方法に肩甲骨の固定を加える

 ○結果

 棘下筋上部:肩甲骨固定>非固定(p<0.05)

棘下筋下部:肩甲骨固定>非固定(p<0.01)

小円筋:肩甲骨固定>非固定(p=0.43)

三角筋:肩甲骨固定>非固定(p=0.74)

 

<コメント>

Cross body stretchingでより棘下筋の柔軟性向上を狙うのであれば、肩甲骨を固定してやるといいということがわかった。 

小円筋や三角筋後部線維の伸張方向については今後調べていきたい。

 

sho’sめも

・肩関節後方タイトネス

肩関節後方タイトネスはスローイング系のアスリートでは怪我の発生率が上がることが報告されている。

後方タイトネスの要因には①上腕骨後捻、②後方関節包の肥厚、③後方筋群の伸張性低下が挙げられており、特に③に対する介入研究が多く報告されている。

 

超音波画像診断装置を用いた肩峰下滑液包の厚み測定について

<論文>

Ohya N et al:Relative and absolute reliability of ultrasound measurements for the thickness of the soft tissue around the shoulder joint of young normal subjects. J Phys Ther Sci. 2017 Apr;29(4):754-759.

 

<なぜこの論文を選んだか>

肩峰下滑液包は肩関節の動きを円滑にするために重要な組織だが、非常に薄くエコーでも捉えにくい印象を受けている。そのため、その厚み測定に信頼性があるのか興味があった。

 

<概要>

○目的

肩関節周囲の軟部組織厚を測定する際の相対信頼度と絶対信頼度を分析することにより超音波測定の信頼性を検討すること。

○対象

 健常成人11名22肩(22.8±2.7)

○方法

棘上筋、肩峰下滑液包(SAB)、上腕二頭筋長頭腱(LHB)の厚みを超音波画像診断装置を用いて測定。

棘上筋・SAB:肩峰と大結節Superior facetが描出される位置で厚み計測

LHB:結節間溝を中央に描出し、肩甲下筋が見える位置で厚みを計測

相対信頼性:級内相関係数ICC

絶対信頼性:標準誤差(SEM)、最小化変量(MDC)、Bland-Altman plot

 ○結果

 棘上筋:ICC=0.91、SEM=0.09、MDC95=0.26

SAB:ICC=0.82、SEM=0.07、MDC95=0.18

LHB:ICC=0.90、SEM=0.08、MDC95=0.23

 

<コメント>

各項目いずれにおいても高い信頼性を有し、なおかつ系統誤差が検出されなかったことから、臨床における評価指標として十分に測定可能であることが考えられる。

SABに関しては健常者はきれいに描出されているが、肩関節疾患を有する症例ではどのようになるのか今後調査が必要かと思われる。 

 

sho’sめも

標準偏差Standard deviation

データの分布のばらつきをみる尺度の一つ。

平均と標準偏差がわかれば、データがどの範囲にどのように散らばっているか(分布)推定できる。

・標準誤差Standard error of the mean

SDはデータそのもののばらつきを見る尺度で、SEMは平均のばらつきを表している。

 

 

 

超音波画像診断装置を用いた肩峰骨頭間距離の測定

<論文>

Leong HT et al:Ultrasound measurements on acromio-humeral distance and supraspinatus tendon thickness: test-retest reliability and correlations with shoulder rotational strengths. J Sci Med Sport. 2012 Jul;15(4):284-91.

 

<なぜこの論文を選んだか>

肩峰骨頭間距離の狭小化はインピンジメントもしくは腱板損傷の原因の一つとされている。その距離を超音波で測定する方法およびその信頼性について知りたかったから。

 

<概要>

○目的

 超音波画像診断装置を用いて肩峰骨頭間距離(AHD)および棘上筋腱厚の測定に関する信頼性について調査すること。また、肩回旋筋力との関係について調査すること。

○対象

 37名(21.5±1.4)

バレーボール選手24名(無症候13名、インピンジメント9名)

健常成人13名(バレーしていない)

○方法

AHD:肩峰の内側下縁から大結節の頂点までを測定

棘上筋腱:LHBより外側10・20・30mmで測定

回旋筋力:Cybex、肩45度外転位で内旋/外旋筋力測定 

○結果

AHD:ICC=0.922

   MDD=2.10mm

棘上筋腱:ICC=0.933

   MDD=0.64mm

AHD cut off value:23.9mm(感度0.67、特異度0.71)

棘上筋腱厚と外旋筋力・内旋/外旋筋力比に正の相関(p<0.05)

 

<コメント>

AHDの信頼性が高く、またカットオフ値が出ていることは臨床で評価する上で非常に重要な情報になる。

特にインピンジメントを有する症例では評価する指標の一つとして考えていいと思われれる。

 

sho’sめも

・Minimum detectable change(MDC):最小可検変化量

再テストなどの繰り返し測定により得られた2つの測定値の変化量の中で測定誤差の大きさを示したもの。

MDC以内の変化は測定誤差によるもの,それ以上の変化が測定誤差以上の変化と判断する。

超音波画像診断装置を用いた棘上筋のCSA測定

<論文>

Schneebeli A et al:Rehabilitative ultrasound imaging of the supraspinatus muscle: Intra- and interrater reliability of thickness and cross-sectional area. J Bodyw Mov Ther. 2014 Apr;18(2):266-72.

 

<なぜこの論文を選んだか>

棘上筋の筋厚を測定した論文は散見されるが、断面積(CSA)の信頼性を測定した論文であり、どのレベルで撮影し、どの程度の信頼性があるのか知りたかったから。

 

<概要>

○目的

リハビリ超音波イメージング(RUSI)を使用し、棘上筋の筋厚と断面積(CSA)測定値の検者内・検者間信頼性を検討すること。

○対象

健常成人25名(男性11名、女性14名)

○方法

検者2名

超音波Bモードを測定し、棘上筋の筋厚とCSAを測定

プローブ位置:筋厚・CSともに棘上窩の内側端から2cm外側のレベルで測定

信頼性の評価:ICC、Bland-Altman plot、95%confidence intervals(95%CI)

○結果

筋厚のICC:検者内0.85-0.95

      検者間0.85

CSAのICC:検者内0.74-0.94

      検者間0.7

 

<コメント>

筋厚はおおよそどの論文を読んでも信頼性が高い事がわかる。

CSAにおいても検者内の信頼性は非常に高く、臨床的に有用であることがわかった。

検者間に関しても中等度の信頼性があり、この点に関しては、検者の習熟度に左右されると思われる。

 

sho'sめも

・Bland-Altman plot

測定値に系統誤差が混入しているかを検討する手法の一つ。

(系統誤差:真の値に対して一定の偏った傾向を持った誤差(バイアスと同義)のこと)

・95%Confidence intervals

95%信頼区間とは、95%の確率で母平均がその範囲に含まれることを表している。

超音波画像診断装置を用いた肩甲上神経の観察

<論文>

Wei-Ting Wu et al: Basis of Shoulder Nerve Entrapment Syndrome: An Ultrasonographic Study Exploring Factors Influencing Cross-Sectional Area of the Suprascapular Nerve. Front Neurol. 2018; 9: 902.

 

<なぜこの論文を選んだのか>

肩甲上神経がエコーで描出できるのか、またその断面積を測定しているということで、画像所見も含めて知りたかったから。

 

<概要>

○目的

参加者の特性による肩甲上神経の特徴および異なるレベルにおける肩甲上神経のCSAを測定し、正常値を知ること。

○対象

堅城成人60名120肩

○方法

鎖骨上窩領域から棘窩切痕までの肩甲骨上神経のCSA値を調査した。

米国内画像法で頸根(C5およびC6)および肩甲骨上神経のCSAを定量化するために、内側神経上膜法および外側神経上膜法を用いた。

異なる年齢群および性別群の間で神経サイズの一変量比較を行った。

参加者の特性が神経CSAに与える影響を分析するために、多変量解析を行った。

起始から窩下窩までの肩甲骨上神経のCSAの分節的変化を調べるために、反復測定分散分析を行った。

○結果

 (1)評価者内および評価者間の信頼性が高かったため、内側神経上膜法は外側神経上膜法よりも信頼性が高かった。
(2)女性は、頸部神経根および肩甲骨上神経の最も近位の部分のサイズが小さかった。
(3)外側神経上膜法を使用した場合、肩甲骨上神経CSAは、鎖骨中央線に近い部分よりもその遠位部が大きかった。

 

<コメント>

肩甲上神経の描出には解剖学的な理解に加えて、ランドマークとなる血管(肩甲上動脈)の描出がポイントになると考えられる。

 比較的小さく映る印象であったが、信頼性が高いという結果であり、今後観察していきたい。

 

sho'sめも

・末梢神経の観察では、その多くが血管と伴走しているため、血管と末梢神経をあわせた解剖学的な理解が必要。

・エコー上の観察ではドップラー機能を使うことで観察しやすくなる。

Quadrilateral space syndromeに対する超音波画像診断装置を用いた診断

<論文>

Hamilton Chen et al:Ultrasound-Guided Quadrilateral Space Block for the Diagnosis of Quadrilateral Syndrome. Case Rep Orthop. 2015

 

<なぜこの論文を選んだか>

QLSのエコー観察をどのような手順で行うのか、またどのような画像として描出されるのか知りたかったから。

 

<概要>

○目的

この症例報告では、診断用四辺形間隙ブロックのための新しい超音波ガイド下技法を説明し、診断ブロックがQSSの診断に使用された症例を提示すること。

○対象

既往歴のない42歳の女性

9ヶ月間、肩関節外側に疼痛を訴える。

MRIにて三角筋後部線維と小円筋に浮腫を認める。

肩関節後方に軽度の圧痛を認める。

可動域は正常範囲内で、Neer、Hawkin、Scarf、Obrienの各テストの結果は陰性。

以上の所見からQLSと診断

○方法

腹臥位で肩関節外転位。

①プローブを肩甲骨肩甲棘に対して垂直に置いた。

②肩甲棘は、棘上筋窩と棘下筋窩とを区別するための目印として使用した。

 棘下筋窩は、棘下筋と小円筋が筋腱接合部の断面図を視覚化した。

③プローブを、小円筋が中心にくるまで下方向に動かし、後回旋上腕骨動脈が見えるようになるまで遠位方向に動かした。

 後方回旋上腕動脈の可視化は、ドップラー機能を利用した。

 腋窩神経を遮断するために、針を生の超音波下で以前に確認された空間に誘導した。

 不注意による血管内注射を回避するために、後回旋上腕骨動脈の可視化を維持した。

○結果

四辺形空間の超音波ガイド下局所麻酔ブロックを行い、疼痛は100%軽減した。

 

<コメント>

QLSの撮影手順が非常にわかりやすく、エコー画像もイラストと合わせて書いてあり、イメージしやすかった。
QLSを構成する筋の観察にもこの方法が活かせると考えられる。

 

sho'sめも

Quadrilateral space(QLS)

上腕骨外科頸の内側、上腕三頭筋長頭の外側、小円筋の下縁、大円筋の上縁に囲まれた四辺形の領域。この四辺形間隙から腋窩神経と後上腕回旋動脈が出る。