超音波画像診断装置を用いた腱板断裂症例における烏口肩峰靭帯の弾性評価
<論文>
Hiroaki K et al:Elasticity of the Coracoacromial Ligament in Shoulders with Rotator Cuff Tears: Measurement with Ultrasound Elastography. Surgical Science, 2013, 4, 1-5
<なぜこの論文を選んだか>
腱板断裂症例にでは、上腕骨頭の運動学的な異常により烏口上腕靭帯(CAL)が変位することが知られている。CALの形態的な変化を捉えた報告は散見されてたが、弾性変化についてはあまり報告がなかったため、興味があったから。
<概要>
○目的
超音波Elastgraphyを用いて腱板断裂症例におけるCALの弾性を評価すること。
○対象
腱板断裂症例41名(男性29名、女性12名:Ave52歳(15-82歳)
健常成人男性24名
○方法
腱板断裂は
CALは超音波画像診断装置のElastgraphy機能を使って評価した。
Elatgraphyは圧力に対するひずみ比で定量化した(CALのひずみ比)。
○結果
CALのひずみ比
年齢と負の相関(p<0.01):加齢に伴い硬くなる
腱板断裂症例>健常高齢者(p=0.0486)
無症候腱板断裂>症候性腱板断裂(p=0.0221)
<コメント>
加齢に伴い弾性が低下(硬くなる)ことは予想できたが、硬くなることで骨頭との間にストレスが生じて疼痛が出現すると考えられたが、実際は断裂例のCALは柔らかかった。この変化は痛みを軽減させるための適応的な変化が生じている?と思われた。
棘上筋断裂症例における超音波画像診断装置を用いた烏口肩峰靭帯の動態評価
<論文>
Wu CH et al:Dynamic ultrasonography to evaluate coracoacromial ligament displacement during motion in shoulders with supraspinatus tendon tears.Journal of Orthopaedic Research 30(9):1430-4
<なぜこの論文を選んだか>
腱板損傷例では上腕骨頭の異常な動きが報告されているが、烏口肩峰靭帯がどのように偏位しているのか知らなかったため、超音波画像診断装置を用いてどのように捉えられるのか興味があったから。
<概要>
○目的
超音波画像診断装置を用いて、棘上筋断裂例の肩の動きに伴う烏口肩峰靭帯(CAL)の変位を評価すること。
○対象
SST:片側の棘上筋完全断裂例20名(男性10名、女性10名:58.0±8.2歳)
Cont:健常人20名 (男性10名、女性10名:60.8±5.1歳)
○方法
棘上筋の損傷程度はエコーを用いて評価
CALの撮影は烏口突起と肩峰の先端が映る部位で撮影
CALの長さ、厚み、CALから骨頭までの距離(CAL-HH)を測定
肩関節90°外転位外旋から受動的に内旋させていく
運動中にCALの変位が観察され、その動きは30/framsで記録した。
○結果
Length:SST 27.8±3.0mm、Cont 29.1±4.0mm
Thickness:SST 1.0±0.1、Cont 1.0±0.2mm
CAL-HH:SST 7.7±2.1mm、Cont 7.9±1.2mm
両群に有意差なし
Passive SAIR:SST(患側)1.9±0.8mm、(健側)1.5±0.5mm
Cont(利き手)1.5±0.5mm、(非利き手)1.6±0.4mm
※SST群においてp<0.01
Active SAIR:SST(患側)1.7±0.7mm、(健側)1.7±0.4mm
Cont:(利き手)1.6±0.5mm、(非利き手)1.7±0.3mm
いずれも有意差なし
<コメント>
棘上筋の損傷は、肩関節外転位内旋運動中のCALの形態に影響を及ぼすことがわかり、肩関節の疼痛に関与していることが考えられる。
超音波画像診断装置を用いた上腕二頭筋長頭腱の評価
<論文>
Drolet P et al:Reliability of ultrasound evaluation of the long head of the biceps tendon. J Rehabil Med. 2016 Jun 13;48(6):554-8.
<なぜこの論文を選んだか>
肩関節周囲炎患者では上腕二頭筋長頭腱(LHB)の圧痛所見を認めることが多い。また同部位をエコーで観察すると炎症反応などを認めることがあるが、その形態学的な変化についてはあまり観察することがなかったため、興味があった。
<概要>
○目的
超音波画像診断装置を用いてLHBの定量的評価信頼性について調査すること。
○対象
肩に疼痛のない健常者31名(男性12名、女性19名:39.0±16.4)
○方法
超音波画像診断装置を使ったLHBの計測:厚み、幅、断面積
検者内信頼性、検者間信頼性:級内相関係数とMDC
○結果
<短軸評価>
幅:4.7±0.6-4.8±1.2mm
厚み:2.5±1.3-2.8±1.3mm
<長軸評価>
CSA:12.1±6.6-12.7±7.7mm
厚み:3.9±1.2-4.1±1.1mm
長軸と短軸の厚み計測に有意差あり(p<0.05)
検者内信頼性:ICC=0.90-0.99
検者間信頼性:ICC= 0.90(幅のみ0.64-0.89)
MDC=幅と厚み0.3-1.6mm
CSA2.8-4.9mm
<コメント>
LHBの測定では2回以上の測定をすることで、幅以外は信頼性が高いことがわかった。インピンジメント症例ではLHBが肥厚しているケースがあるということだが、その点も注意深く観察して評価する必要がある。
超音波画像診断装置を用いた烏口肩峰靭帯の厚み計測
<論文>
Dietrich TJ et al:Ultrasound of the coracoacromial ligament in asymptomatic volunteers and patients with shoulder impingement. Acta Radiol. 2016 Aug;57(8):971-7.
<なぜこの論文を選んだか>
烏口肩峰靭帯の肥厚はインピンジメント症候群の一要因とされているが、エコーではどの部位で撮影するのか、そしてその厚みは症状がある人とない人の違いがエコーで観察できるのか興味があったから。
<概要>
○目的
肩関節インピンジメントを有する症例と無症候者における超音波画像診断装置を用いて烏口肩峰靭帯の比較をすること。
○対象
インピンジメント症例29名(49.9歳)
無症候被検者29名(35.5歳)
○方法
2名の放射線技師が超音波画像診断装置を用いて烏口肩峰靭帯を撮影し分析した。
○結果
靭帯の厚み(烏口突起部、中間部、肩峰部)
無症候被検者:1.8±0.4mm、1.4±0.2mm、2.1±0.6mm
インピンジメント:1.3±0.2mm、1.9±0.5mm、1.9±0.5mm
烏口突起部の厚みに有意差あり(p<0.01)
靭帯長
無症候被検者:30.4±3.6mm
インピンジメント:30.6±2.4mm
<コメント>
インピンジメント症例では一部厚みの肥厚が超音波エコーを使って捉えることができることがわかった。
もともとの靭帯の厚みが薄いため、観察のスキルや信頼性・妥当性についてもう少しレビューする必要がある。
超音波画像診断装置を用いた異なる外転角度における肩峰下腔の測定
<論文名>
Longo S et al:Ultrasound evaluation of the subacromial space in healthy subjects performing three different positions of shoulder abduction in both loaded and unloaded conditions. Phys Ther Sport. 2017 Jan;23:105-112
<なぜこの論文を選んだか>
肩峰下腔の距離の減少はインピンジメントの発生要因の一つである。臨床で評価するにあたりエコーではどこで撮影しているのか、また外転角度および負荷の有無によってどの程度距離に変化が出るのか知りたかったから。
<概要>
◯目的
肩の筋力訓練のために3回の運動を行った後、無症状の被験者の肩峰下腔を測定した。◯対象
健常成人男性25名(24±5歳)
◯方法
負荷条件:負荷なし、4kg負荷
角度条件:90°外転位、90°外転位外旋、Upright row posture(UR):(約90°外転位)
12名の被検者に対して、2名の検者の検者間信頼性の測定
◯結果
ICC=0.87、SEM=0.23-0.51mm、MDC=0.61-1.79mm
分散分析:負荷(p=0.003)と角度(p=0.001)および相互作用(p=0.004)の間に有意差があった。
90°外転位 (Neutral) NL:0.67±0.12 WL:0.71±0.17
90°外転位(Ext rot) NL:0.86±0.22 WL:1.05±0.27
UR position(UR) NL:0.82±0.20 WL:0.77±0.15
NL:Neutral<Ext rot、UR(p=0.002)
WL:Neutral、UR<Ext rot(p=0.001)
<コメント>
肩関節外転外旋位というのは負荷がなくても肩峰下腔を狭小化させる可能性が高いことがわかった。そのため、以下に外転させた際に上腕骨頭の上方偏位を防ぐか、その原因となる組織はなにかを評価・介入していくことが重要である。
超音波画像診断装置を用いた肩甲上腕関節の偏位の評価
Rathi S et al:Measurement of glenohumeral joint translation using real-time ultrasound imaging: A physiotherapist and sonographer intra-rater and inter-rater reliability study. Man Ther. 2016 Dec;26:110-116
<なぜこの論文を選んだか>
肩甲上腕関節の偏位の評価を定量的にすることは非常に難しい。その評価を超音波を使ってどのように評価しているのか興味があったから。
目的
理学療法士が超音波を用いた肩甲上腕関節の前方および後方偏位の測定における信頼性を評価すること
健常成人12名
等尺性内旋運動および外旋運動中の偏位を測定した。
測定は理学療法士と熟練した超音波検査技師によって行われた。
中間位と外転位、前方移動と後方移動をそれぞれ測定した。
検者内・検者間信頼性は級内相関係数(ICC)および標準誤差(mm)を行った。
結果
検者内信頼性:Phisiothrerapit:ICC=0.86-0.98
Sonographer:ICC=0.85-0.96
検者間信頼性:ICC=0.50-0.75(中程度~良好)
前方偏位測定:ICC=0.31-0.53(低~中程度)
MDs=0.2~0.3mm
後方偏位測定:ICC=
MSs=0.1~0.2mm
コメント
検者内の測定においては高い信頼性があったため、肩関節障害症例の病態運動学として上腕骨頭の運動異常を評価する上で有用である。
術前診断における肩甲下筋損傷の有病率と超音波エコー評価の精度
<論文>
Narasimhan R et al: Prevalence of subscapularis tears and accuracy of shoulder ultrasound in pre-operative diagnosis. Int Orthop. 2016 May;40(5):975-9.
<なぜこの論文を選んだか>
臨床であまり肩甲下筋損傷のケースを見ることはないが、治療として筋腹への介入することは多い。そのため、知識として肩甲下筋損傷について、またエコーによる評価について知りたかったから。
<概要>
○目的
肩関節鏡検査で肩甲骨下損傷の有病率を確認し、損傷診断における術前超音波検査の精度を決定すること
○対象
腱板損傷の関節鏡検査を受けた236名
○方法
肩甲下筋損傷の有病率をLafosse classification systemを用いて分類した。
超音波評価および術中所見を比較して、肩甲下筋損傷の検出における超音波の正確性、感度および特異性を決定した。
○結果
腱板損傷修復術を受ける患者のうち、肩甲下筋損傷の有病率は31.4%。
肩甲下筋損傷の検出における超音波の感度は39.5%、特異度は93.1%。
超音波の総合精度は75.8%だった。
超音波の感度:小さい損傷(タイプ1、2)は低い(42.8%)
大きい損傷(タイプ3、4、5)は高い(79%)。
全体的な陽性適中率は73.1%、陰性適中率は76.4%であった。
<コメント>
損傷が小さい場合にはエコーによる感度はかなり低いとのこと。
その場合、動きを組み合わせてみたら、また違うのかな?静止画で判断できないことも動画でわかる情報が多い印象があるため、動態評価は診断的に有用化わからないが、機能を見る上では大切な気がします。